この記事を読むと、成長期のバレエが身体に与える影響やバレエの成長期と身体の成長期の違いについて分かります。
最近膝が痛いと良く言われるんだけど、これは単に成長痛なだけ?それともバレエは成長期に悪影響だったりするのでしょうか?
こんな疑問に元バレエ教師がお答えします。
女子で8~12歳ごろ、男子で10~13歳ごろと言われる第二性徴。
この時期こそ身長が大きく伸びるため、バレエが骨や身体に与える影響が大きくなる時期でもあります。
バレエをやっていなくても、成長痛が起きることもあり、身体の変化が大きい期間ですよね。
そんな身体の成長期の身体にバレエが与える影響について、元教師の私が解説していきます。
バレエが好きでたくさん練習したい時期。女の子はトウシューズを履く時期にも重なります。それでもやっぱりやりすぎは身体によくありません。正しい知識を身に着けて、成長のサポートをしてあげましょう。
バレエが成長期に与えるデメリット3つ
まずは心配なデメリットからご紹介していきます。
バレエだけでなく、すべての身体を動かす競技で成長期へのデメリットはあると思っています。
しかし、身体を動かすことは成長に必要なことです。
何事もやりすぎによってデメリットになることが多いので、きちんと休養を取ることが大切ですね。
骨への負荷
身長が伸びる時期の骨は、骨端線と呼ばれる場所にある軟骨が増えることによって伸びていきます。
成長期が終わるとこの骨端線はなくなり、骨となりますが、それまでは軟骨のままです。
つまり、骨よりも軟骨の部分は弱い状態であると言えますね。
そんな軟骨が多い時期にジャンプやトウシューズで繰り返し負荷を与え続けたらどうなるでしょうか?
骨は20歳を過ぎたころに固くなり、強くなると言われます。
それまでの時期は、骨の強さよりも筋肉が強くなってしまい、骨が筋肉に引きはがされることによる剥離骨折などが起きることも。
筋肉の強さに対して骨の強度が追いついていないことがケガにつながることもあります。
無理なダイエット
バレエを習っている女の子は特に体型に敏感です。
お教室のお友達やコンクールで周りの子と自分の身体を比べることがとても多くなります。
バレエは大きな鏡の前で身体のラインが良く見えるレオタードでレッスンするため、いやでも自分の体型が良く分かりますよね。
小学校高学年~中学生にかけては生理も始まり、身体に変化が起こる時期。ふくよかになっていく自分の身体を見て、自分が太っていると思い込んでしまう子供は多いです。
そんな時にまず考えてしまうのが食事制限。
成長期に必要な栄養素が取れないと、身長が伸びなくなってしまう可能性もあります。
身長が伸びないことによって、プロのバレエダンサーをあきらめなければならない未来が待っているかもしれません。
成長期に行うべきなのは、ダイエットではなく、身長を伸ばすことですよ!
バレエっ子の理想的な体重についてはバレエで理想の体重は?成長期の過度なダイエットが厳禁な理由3選で詳しく解説していますのでこちらもあわせてご覧ください。
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バレエで理想の体重は?成長期の過度なダイエットが厳禁な理由3選
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休養不足
子供の体力には底がないと思いがちですが…きちんと休養することが成長のために重要です。
睡眠時間に成長ホルモンがたくさん分泌されることはご存じですか?
睡眠時間が少なくなれば、身長が伸びるチャンスも少なくなってしまうことにつながります。
また、筋肉にも休養が必要です。バレエで酷使した筋肉をマッサージやストレッチもせず放置してしまうと、どんどん固くなってしまいますよ。
固い筋肉は太く見えますし、バレエの理想の体型からは遠ざかってしまいますよね。
大好きなバレエをたくさん踊っていたい気持ちは分かりますが、成長期こそ、きちんと身体のケアをしてあげることが必要です。
成長期のバレエダンサーと睡眠についてはこちらのバレエダンサーは睡眠もトレーニング!【成長期は疲労回復が最重要】もご覧ください。
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バレエダンサーは睡眠もトレーニング!【成長期は疲労回復が最重要】
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バレエが成長期に与えるメリット3つ
デメリットもありますが、メリットももちろんありますよ。
バレエを習っている子って姿勢が良くて歩いているだけでもきれいに見えませんか?
これも日々のレッスンの成果ですよ。
姿勢が良くなる
バレエの姿勢は背筋が伸びたいわゆる良い姿勢です。
バレエを習っていると、もともと猫背の子もだんだん姿勢が良くなっていきます。
普段は姿勢を気にしなくても、レッスン中は嫌でも強制されるため、結果として姿勢が良くなっていくのでしょう。
私自身、「姿勢が良いね」と褒められた経験は多くあり、嬉しかった記憶として残っています。
所作が美しくなる
バレエは指先まで意識して踊らなければきれいに見せることはできません。
バレエと似ているチアダンスなんかを見ていると、バレエをきちんと身に着けている人とそうでない人は一発でわかります。
一番違いが出るのが指先の使い方。バレエを習っていると、自然と指の先まで意識できるようになり、所作まで美しく見えますよ。
普段の生活でも、何気なく持ったハンドバッグの手やボールペンを取ろうとした手先など、ほんの些細な動きに差が出ます。
このようにさりげない所作が自然ときれいになるのはバレエをきちんと習っているからです。
芸術鑑賞に興味を持つ
バレエはスポーツではなく芸術です。
フィギュアスケートや新体操と同じ部類に分類されそうですが、音楽や絵画と同じ部類にいます。
もっと近いとオペラや歌舞伎、演劇といった舞台芸術と同じですよね。
舞台芸術の中でも身体を酷使しているのがバレエなのではないでしょうか。
見ている人の心に響く踊りとは、心の内面から訴えることができている人の踊りです。相手の心に何かを届けるためにはまず自分の心が豊かでなければなりません。
心に響く踊りの違いを肌で感じるためには、やはり芸術鑑賞が一番です。
舞台でもいいですし、音楽や美術館でもいいでしょう。
作品を通して「心が動く」という体験ができているダンサーこそ、自分の踊りで人の心を動かすことができると私は思っています。
成長期のバレエで気を付けるポイント3つ
成長期のバレエにはデメリットがありましたよね。
そのデメリットを少しでもなくしていくために気を付けるべきポイントをあげました。
お教室の方針によって実践できない場合もあると思いますので、あまりにも生徒の身体を考えていない先生だなと思ったときは、教室の移動も検討することをおすすめします。
同じテクニックばかり練習しない
日本のバレエ界は世界から見たら異常です。
特に昨今のバレエコンクール熱は異常にもほどがあります。
そもそも海外で子供向けのバレエコンクールなんて数えるほどしか開催されていないからです。
コンクールで踊られる主役の踊りを踊りこなすことは、基礎を勉強中の子供の身体にとっては大きな負担となります。
もともとプロのダンサー向けに作られた振り付けをほぼそのまま子供がトウシューズを履いて踊る。
これがそもそもの異常状態なのです。
コンクールのために同じヴァリエーションを何度も練習する=ヴァリエーションに入っているテクニックばかり練習するということになりますよね。
これを繰り返していると、筋肉の強度の左右差が広がったり、ひどいと身体がゆがむ原因にもなります。
これをきちんと理解してコンクールに出場させている先生なら良いですが…そうではないのなら少し恐ろしいですよね。
トウシューズを履き始める時期
国際ダンス医科学会(IADMS)がトウシューズを履き始めるためのガイドラインを発表しています。
まずはこちらに目を通してみてください。
トウシューズのガイドライン
- 決して 12 歳以下ではないこと。
- もし解剖学的に適切な水準に達していないのなら(例えば、足首と足関節の底屈可動域が不十分であったり、下半身の骨格配列が悪かったりすること)決してトウシューズを履かせないこと。
- もし本気でプロを目指しているというわけでないのなら、トウシューズを履くことを思いとどまらせること。
- もし胴体と骨盤(体幹の筋肉)や脚が弱いなら、トウシューズの練習開始を遅らせること(そして筋力強化プログラムを行うことを考える)。
- 足と足首が過度の関節可動域をもっているなら、トウシューズの練習開始を遅らせること(そして筋力強化プログラムを行うことを考える)。
- もしバレエのレッスンが週 1 回なら、トウシューズを履くことを思いとどまらせること。
- もしバレエのレッスンが週 2 回で、上記の条件に当てはまらないなら、バレエを始めて4 年目にトウシューズの練習を始めること。
引用元:国際ダンス医科学学会 トウシューズの練習を始めるためのガイドライン
まずはじめに決して 12 歳以下ではないことと書かれていますよね。
もちろん理由があって、不十分な関節可動域、筋力、そして安定性といった身体の機能と関わっていると書かれています。
骨へのストレスがかかることももちろんですし、筋力が足りないことによってケガにもつながりかねません。
それなのに、12歳以下の小学生の部で黒鳥のヴァリエーションを踊っている子供がいる日本の現実…。いかに教師が無知であるかが分かりますよね。
トウシューズで出るのであれば、きちんと自分に合ったヴァリエーションを練習することが大切です。
また、ヴァリエーションの練習ばかりでなく、全身を鍛えるレッスンをきちんと行うことが重要だと考えます。
オーバーワーク
たくさん踊ったらその分休養が必要です。
コンクールに立て続けに出場したり、発表会でたくさん出番があったり…
踊る機会が多いのは良いことですが、それが原因でケガをしてしまって身長が思うように伸びなかったり、筋肉の疲労が取れずに固い筋肉になってしまっては、理想のバレエ体型からは遠ざかってしまうことになります。
ゆっくりとストレッチやマッサージをする時間を取る、十分な睡眠時間を取ることは、レッスンをすることと同じくらい大切なことです。
バレエの成長期と身体の成長期
身体が成長している時期は、バランスがとりづらくなったり、テクニックがやりづらくなったりすることがあります。
そんな時は身体の成長に伴うものなので、しょうがないとあきらめましょう。
どうやったら自分のバランスをコントロールできるかをきちんと考え、学ぶ期間にしておくと、成長してからスランプになってしまったとしても、その経験を生かすことができますよ。
バレエの成長期は身体の成長よりも遅いことが多い
バレエの成長期と身体の成長期は異なることが多いです。
身体の成長期は女子で8~12歳ごろ、男子で10~13歳ごろと言われます。
このころに身長が伸びたり、体型が変わったりしていくことが多いでしょう。
一方バレエは、 もちろんその人によって大きく異なりますが、きちんと頭でバレエを理解し、訓練ができるようになり始めるのが小学校高学年くらいだと思っています。
そこから日々のレッスンを重ね、多くの子が中学生くらいの時期に大きく伸びている印象です。
高校生になってから伸びることももちろんあります。
しかし、小学生の時にコンクールで1位を毎回取っている子は、成長につれて伸び悩んでいる子が多いイメージですよ。
身体の成長期はバレエの上達が難しい
バレエの伸び悩みの時期は、身体の成長期のサインかもしれません。
バレエでは、片足でバランスを取ったり、回転したりと自分の身体の感覚が分かっていないとできないことが多くあります。
身長が伸びたり、体型が変わり始めている時期は、自分の身体の感覚が分かりづらいですよね。
成長が終わった大人でさえ、毎日感覚が違うこともあるのに、身体が変わっている時期ならなおさらです。
そんな時はどうやったらもっと自分の身体をコントロールできるかを考え、練習する期間にしましょう。
うまくいかない、できないからといってあきらめてしまっていては、身体の成長期が終わった後にバレエの成長ができなくなってしまいますよ。
成長のために必要なことを理解しておくべき
身体の成長にも、バレエの成長にも、知っていおいた方が良い知識がいろいろあります。
知識をあらかじめ知っていて行動するのと、知らないでそのまま過ごすのでは全く結果がことなることもあるでしょう。
ここでは簡単にそれぞれ知っておいてほしい知識を紹介します。
身体の成長に必要なこと
- 十分な睡眠時間(休息)
- 成長に必要な栄養
- 規則正しい生活習慣
バレエの成長に必要なこと
- アン・ドゥオールの正しい知識
- 基本的な体幹
- バレエに必要な柔軟性
- 表現力
成長に必要なことは当たり前のことばかりですよね。
この当たり前をきちんとできているかどうかで、将来の体型が変わってしまうので、意識してあげましょう。
また、バレエの知識は特に「アン・ドゥオール」について正しい知識を自分で身に着けていなければ、ケガの原因にもなります。
アン・ドゥオールはバレエの基礎です。
算数の足し算と同じくらい大切ですが、これをきちんと理解してない子供や、指導してない先生が多いと感じています。
まとめ:バレエは成長期にやりすぎない!
今回は成長期についてお話ししました。
成長期のバレエが身体に与える影響はさまざまで、デメリットもあるということを頭に入れていただければ幸いです。
デメリットがあるからやらないのではなく、デメリットも頭に入れてやりすぎには注意することが良い対処法ではないでしょうか。
どんなスポーツでも成長期にやりすぎることは危険です。
身長はバレエで成功するためにも重要なので、成長期は身体の成長を最優先に考えてあげたいですね。
バレエに身長が必要な理由はこちらのバレエに身長は必須条件!低いと困るバレエの残酷な現実と対策をご覧ください。
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バレエに身長は必須条件!低いと困るバレエの残酷な現実と対策
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