この記事を読むと、バレエの表現力をつける方法とレッスンで表現力をあげる方法が分かります。

うちの子バレエの先生に「表現力がない」って言われて落ち込んでるんだけど、表現力を付けるために出来ることって何かあるのでしょうか?
こんな疑問に元バレエ教師がお答えします。
バレエは踊りで物語を伝えなければなりません。
どんなに美しい踊りをしても、その人から何も伝わらなければただの踊りになってしまいます。
踊ることに精いっぱいで笑うことすらできないお子さんはたくさんいますが、それではただの自己満足でしかありません。

バレエはあくまでも舞台上で踊り、お客様に見せるもの。お客様にいかに楽しんでもらえるか、いかに伝えるべきことを伝えられるかを追求していかなければいけません。
それは発表会であれ、コンクールであれ同じこと。
「バレエは芸術である」ということを子供のころから頭にいれておいてほしいです。

バレエは技や正確さを競うものではありません。テクニックももちろん大切ですが、バレエの「表現力」はダンサーにとってテクニックよりも重要な要素ですよ。
バレエの表現力をあげるコツ3つ

バレエの表現力をあげるためには、その役でどのような表現をするべきなのかをまず頭に入れなければいけません。
また、他の人がどのような表現をしているかを知ることで、自分らしい表現を見つけることもできますよ。
踊りや物語の背景を知る
まずは踊る役のシーンや役柄など、その踊りの背景を調べましょう。
人によって役の解釈の違いはあるかもしれませんが、登場人物の育ちや環境などはあらかじめ決まっていることが多いからです。

例えば、ジゼルは心臓病を患っている女の子であるため、あまりに元気よく踊りすぎるのはちょっと違いますよね。また、結婚式の踊りなのに暗い顔で踊っていたり、悲しいシーンなのに笑っていたり…それでは物語は伝えられません。
ディベルティスマンと呼ばれる踊りだけの役(くるみ割り人形のお菓子の国のシーンなど)もありますが、そこにもそのシーンが設定されていますよね。
自分で調べてみても良いですし、発表会やコンクールの踊りであれば、先生に直接聞いてみても良いでしょう。
踊りの背景を学ぶことで、その役になりきって踊ることができるようになります。

舞台鑑賞や動画で学ぶ
背景を学んで、具体的にどうやってそれを表現するかを学ぶには、実際のダンサーを見るのが良いでしょう。
実際に見て学ぶことで、表情のつけ方、目線やポーズの取り方、踊り方などその役の特徴のつけ方を学ぶことができます。

例えば、ドン・キホーテのキトリであれば、少しかっこつけるためにあごを引いてみたり、目線をうまく使ってみたり…バレエのテクニックとは違ったところで表現できることはたくさんあります。
出来れば一人のダンサーだけではなく、いろんなダンサーの踊りを見てみましょう。
その中から自分がやってみたい表現の仕方があれば取り入れてみると良いですよ。

表現をする余裕を作る
どんなに表現について勉強していても、実際に踊りになったときにそれができなければ意味がありません。
バレエはお客様が見たものがすべてなので、いくら勉強していても舞台上でできなければ勉強していないのと同じです。

バレエのテクニックや注意を気を付けるだけでいっぱいいっぱいになってしまっていては、表現にまで気を回すことはできません。そうならないために、日ごろのレッスンを大切にしていきましょう。
レッスンがきちんとできて、バレエの基礎は考えなくても身体が覚えている状態であれば、表現する余裕が生まれます。
反対に身体がきちんとできていない状態で上半身を大きく使って表現してみようと思っても、バランスが崩れてしまうだけですよ。

バレエの表現力をあげるためにレッスンでやるべきこと

今までは主にバレエの役についての表現方法の学び方についてお話ししましたが、これからは踊りの表現の仕方についてお話しします。
同じ振り付けを踊っていても、アダジオのゆっくりした音楽で踊るのと、アレグロの速い音楽で踊るのでは印象が違いますよね。
速さの他にも、明るい音楽か、暗い音楽か、アクセントがあるか、なめらかなメロディなのかなど、音楽にも個性があります。
その個性に合わせた踊りを作ることでもっと役の表現の幅も広げることができますよ。
速さや強弱で呼吸を変える
アダジオとアレグロでは呼吸の速さが違いますよね。
踊りもその呼吸に合わせて踊り方を変えていきましょう。

バレエのレッスン曲はそのステップがやりやすいテンポになっています。 まずは音に合わせて踊ることを重要視しましょう。
テンポに合わせて踊ることができなければそのステップをうまく表現することはできません。
2拍子や3拍子といった拍子を頭にいれて踊ることもおすすめです。

曲からイメージして踊る
曲のイメージを考えながら踊ってみると踊り方が変わることがあります。
頭でイメージしたことを身体で表現するのは思った以上に難しいですが、それができると表現の幅は広がるからです。
例えば、曲を聴いて森や海をイメージしたり、スタイリッシュな感じだったり、不思議な空間だったり…

稽古場でレッスンしている自分ではなく、他の空間にいる自分をイメージしながら踊ってみるといいですよ。
踊っている感覚が変わることが分かれば大成功です。
これを練習していくと、コンクールのような背景が何もない場所でも、背景が目に浮かんでくるような表現豊かな踊りができるようになりますよ。

アクセントをつけて踊る
踊りのアクセントは表現のポイントにもなります。
アクセントが多い踊りと少ない踊りではイメージが変わるからです。
同じアームスの動きでも、最後にアクセントをつけるか、アクセントなく滑らかにポーズになるのかで全く違う役柄を表現できます。

極端な例ではありますが、同じ鳥の動きでも黒鳥と白鳥の動きを踊り分けできるのは、アクセントのつけ方も重要であるからです。
ただ与えられたアンシェヌマンを淡々と踊るのではなく、少し長くバランスやポーズをとってみる。
見せたいポーズは身体全体を使ってアクセントをつけてみる。
こんな工夫から表現の幅は広がっていきますよ。

バレエが伸びる子の特徴はこちらのバレエが伸びる子に誰でもなれる!【センスは鍛えて育てられます】で詳しく解説しています。
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コンテでの表現力のつけ方

クラシックバレエでは、役柄があったり情景があったりと表現がしやすいですが、コンテンポラリーダンスはそうもいきません。
振付家の意図もありますが、ダンサーが積極的にそのダンスを使って表現していく必要があります。
今回は、コンテを踊るのは初めて、苦手といったお子様に向けて、コンテでの表現の仕方のアドバイスをしていきます。
少しでも参考にしていただければ幸いです。
音をよく聞く
まずは、音楽からイメージを作ります。
無音の場合は無音である意味を考え、音楽がある場合はその音楽から感じられることを表現してみると踊りとマッチしやすいです。

振り付けの方法は人それぞれですが、その音楽を使っていることにも意味があります。
作りたい踊りのイメージとあっている音楽であったり、強弱をつけやすい音楽であったり…
音楽がストーリーを作り出してくれていることもありますよ。

振り付けからイメージする
振付家が意図して入れた動きの意味を考えましょう。
例えば、「誰かに引っ張られるように」動いてほしいと言われたのであれば、誰に引っ張られているのか、なぜ引っ張られているのかを考えます。

多くの振付家はその1つ1つの動きに意味やストーリーを付けているので、わからなければ恥ずかしがらずに質問してみましょう。自分で考えてみても良いです。
この場面ではこうだったけど、次の場面ではこう変わるといったアドバイスもどんどん自分の中に取り入れます。
踊りで伝えるためには踊り手がきちんとイメージして感情を込めて踊る必要がありますよ。
コンテをうまく踊るためには踊りの研究はクラシック以上に必要だと思ってくださいね。

身体全体を大きく使う
コンテンポラリーは、クラシックバレエ以上にエネルギーを伝えやすい踊りです。
なぜなら、コンテにはクラシックバレエのようなポジションなどの型がないから。
クラシックでは型にはめられた中でいかに美しく見せるかが重要となりますが、コンテはそうではありません。

特にオフバランスはなかなか勇気がいりますよね。
コンテを踊るときはクラシックの基礎を忘れても大丈夫。
頭で考えなくてもクラシックの基礎はきちんと身体に入っているはずですので、その常識を覆すつもりでコンテを踊りましょう。

転んでしまいそうになるくらい身体のバランスを崩してみたり、手足をこれでもかというくらい大きく伸ばしてみたり…。新しい感覚で踊れるようになりましょう。
きっとクラシックを踊っているときよりも身体を大きく使うことができるはずですよ。
それがあなたの踊りのエネルギーとなります。

まとめ:バレエで表現力のある子には努力でもなれる!
今回はバレエで表現力のある子についてお話ししました。
表現力は練習でつけていくことができる力です。

特に踊っているときに笑うことすらできないお子さんは、まずは笑顔で踊ることから練習してみましょう。
踊りのことで頭がいっぱいいっぱいになっていてはいつまでも表現はできません。
バレエの基礎はきちんと身体にしみこませて、踊りの時は表現をする余裕が生まれるようにしていきましょう。

バレエでプロになれる子についてはこちらのバレエでプロになれる子とは?【コンクール入賞よりも大切な才能】も合わせてご覧ください。
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